せき宮

真木テキスタイルスタジオの布の魅力 その5 草木染め

   

はじめて展示会をした15年ほど前は、糸の素材そのものの色、茶系、グレー系に藍色が中心でした。色々な染料を試しながら一色づつ増えて、今は鮮やかな色も豊富にそろいました。鮮明な華のある色ですが、草木染めならではの落ち着いた深み渋みを含んだ色です。

草木染の素晴らしいと感じる点は、肌の色が映えること。顔映りが良いのです。

たくさんのお客さまの試着に立ち合い、感じたことです。シルク特有のいぶし銀な光沢のせいだけではなさそうです。ストールを首元に当てただけで、写真撮影のレフ版とも違う何とも説明しがたい、顔色が映える効果があるようです。緑のある室内は、瑞々しく美しい。草木は、他を引き立てる力があるのでしょうか。

染料は全て植物染料。糸の状態で染めます。布になってから染めたもの、いわゆる後染めのものとは趣きが格別に違います。例えば、同じ赤系の布でも隣り合う一本一本の色が微妙に違い、この違いこそが、色に奥行がでるのです。真木さんは、機に縦糸を掛けながら色の構成をしています。事前にスケッチブックに糸サンプルを張り付けて大まかな構成を練りますが、実際に糸を掛けながら色バランスを調整していきます。場合によっては、もう少しこんな色、あんな色をと、追加しながらの作業です。インドの現場では、布づくりの様々な工程がありますが、多くは染めの時間に費やされると聞きます。自然の素材は、同じ染料でも、その年の天候などもあり、同じ色が出るとは限りません。また、染められる素材、絹、麻、綿、羊毛も毎年仕上がりが異なります。求める色はあるものの、無理に思い通りにすることなく、その時々の出来に合わせて、まさに素材に寄り添うように、染め色をそのまま受け止め布づくりをしています。特にストールにその雰囲気がよく出ています。色の組み合わせもクォリティー高く自由自在。どうぞ手に取って糸一本一本味わいながらご覧になってみてください。

 

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過去の展示会より。
写真はイメージです。