真木テキスタイルスタジオの布の魅力 その1 絹糸
今月29日から始まる、「真木テキスタイルスタジオ 秋冬の布・衣」展示会。
詳しくは、作者のHPをご覧ください。とても素敵な内容で読み応えがあります。
当店での展示会は初回が2001年秋。かれこれ15年ほどの付き合いになります。個人的にはもう少し前から愛用しており、私からは、長年の着心地の視点を交えてご紹介いたします。
真木テキスタイルスタジオでは、インドのタッサーシルクを手紡ぎし、草木で染め、手織りの布から衣を作っています。代表の真木千秋さんは、この素材に出会うまで、世界各地の染め織りが暮らしに息づくところばかり訪ねたといいます。
タッサーシルクとは、インドの野蚕。沙羅の木の葉を食す野生の蚕が生み出す、力強くまた優美な糸に衝撃的な出会いをし、この風合いを残したままの布が作れないか、試行錯誤が始まります。
絹の特徴は、冬暖かく、夏涼しい。
この相矛盾した言葉の意味は、この絹糸の構造に秘密があるようです。この野蚕糸は他の絹糸と比べて、多孔質です。空気を含んでは発散、水分を含んでは発散、まるで糸が呼吸しているようなしくみです。これは、蚕が繭の中で快適に過ごすための虫の知恵。恐らく、繭の中は、温度、湿度が一定に保たれ、空調が完備された部屋になっているのでしょう。この小さな虫の知恵を頂いて衣にしているのです。この糸の特徴をそのまま生かすには、手紡ぎがより効果的です。蚕が震えながらウェーブをかけながら、ある時は太く、またある時は細く吐き出した糸を指の先に感じながら紡いでいきます。言うは易く行うは難し。布づくりを共にするインドの職人さん達と呼吸を合わせながら試行錯誤の糸づくりの末、今に至りました。こうして手元に届く衣を羽織って気づくこと。一枚で、暖かく、涼しい。例えば、日中ブラウス1枚で過ごせる季節。少し汗ばんでもさらっと気持ちがいい。夕方、少し涼しくなって、普段は1枚羽織りたいところを、だんだん暖かくなる感覚がはっきりとあります。熱を発している訳ではありません。体温を保ってくれているのです。私は、一日のうちに寒暖の差がある日、出掛ける先の気温がここより暑いか寒いか判断に迷うとき、冷房が効き過ぎる所などで活用しています。特に風邪で体温調節がうまくいかない日など、体調が悪い時にその効果が大いに発揮され重宝しています。私にとって、肌の一部のような心強い布です。これから寒い季節どうぞ羽織ってみてください。